田中周二新会長就任の挨拶

 3月に行われた選挙により承認を受け、4月1日付けで会長に就任することになりました。恒例により、新会長としての抱負を述べなければなりませんが、私には実務界での乏しい経験と民間研究者としてのキャリアしかありません。従って、大きなことを望んでも自ずと限界がありますので、2年間の任期中に、私のできうることを両副会長や評議員・理事方のご支援をいただいて着実に実現してゆこうと考えております。基本的には、偉大な初代の刈屋元会長、次代の森平前会長が、当学会の発展に大きく貢献された、その路線を踏襲し発展させ次代に引き継ぐことが私の使命ではないかと考えます。

 早いもので、JARIPが設立された2003年10月1日より本年度で、今年の9月末でちょうど5周年目を迎えることになります。当学会の設立趣意書には、つぎのようなことが書かれています。すなわち、「巨大化、複雑化、グローバル化するリスクについての研究は、主に金融リスクの研究を中心とする金融工学のみでは、多様な社会的ニーズに十分応えていくことが難しい。また伝統的に保険リスクの研究に特化してきた保険数理学のみでは十分であるとはいえない」という認識の下で、「両者を統合し、更に他の学際的な諸科学で得られた先端研究成果を共有することにより、新しいリスクの研究方法や分析手法、リスク管理技術を発展させ、その研究成果を広く社会へ還元していく必要がある」ということがこの学会の使命でありましたし、これからも重要なテーマではないかと考えます。しかし、この分野のテクノロジーの進歩は日進月歩であり、学会の活動がそれに十分対応できているかというと、まだまだ力が及ばないことを痛感しています。そのためには、多くの若い研究者や実務家に魅力がある活動をもっと進めていく必要があると考えます。幸い、学会には5年間で蓄積されたある程度の資金とノウハウがありますので、従来の研究会・研修会の活動に加え、シンポジウムや外国人学者の講演など、やや大きなイベントも企画したいと考えています。それが第一の仕事になると思います。

 次に、この学会の会員は、実務家と大学などの研究者によって構成されていますが、実務家は、主に保険会社や信託銀行やコンサルティング会社で働くアクチュアリーやリスク管理専門家、一方、研究者は、保険に関心のある経済学者、金融工学者、数学者、統計学者などからなっています。現在、個人会員数は230名程の規模ですが、もう少し異分野の人や若手の人に入っていただき、次代を担う人材の育成を進められるとよいのではないかと考えます。これが第二の仕事です。

 最後に、これが最も重要な仕事と思いますが、この分野の良い論文や研究成果がどんどん生まれるような学術的な活動を作り出していくことを目標としたいと思います。現在、JARIPではJARIPジャーナルという論文誌と、「リスクと保険」という実務誌を発行しておりますが、質・量ともまだ満足できる水準に達していないと思います。折角、実務界と学界が参加する自由な場を提供する学会ですので、刺激的な学問的議論を活性化して、日本からも世界に向けて良質の発信ができるようになることが理想です。まだ英文専門誌や国際学会の開催などを行う力はありませんが、長期的な目標としていつの日か実現できれば、素晴らしいことだと思います。

 以上、どこまでできるか分かりませんが、会員皆様のご協力の下で少しでも前に進めたいと考えます。是非、積極的なご支援、ご鞭撻を執行部にお寄せいただきたいと存じます。

INDEX